WHAT'S NEWS お知らせ
柔術インストラクターの僕がレスリングを薦める理由
名古屋インストラクター五十里です。前回のコラムでも触れさせて頂きましたが、元プロMMAの経歴を経て現在に至っています。
参戦していたのはパンクラス。
…というかパンクラスが運営していたアマチュア一般クラスP’s LAB(ピーズラボ)の会員として月謝を払って通っていた、今の名古屋/HOPEのメンバーと同じ立場でした。
当時パンクラスのプロリングに上がる為には厳しき門を潜る過酷な入門テスト、練習生を経てデビューするしか無かったし、まさか自分がプロのリングでプロのルールで闘う想像なんてし得なかったです。
パンクラスの元々の源流はUWFの流れを汲む”ハイブリッドレスリング”…つまり真剣勝負・ガチンコの新しい形のプロレスリング。
アマチュアクラスの練習のベースは入門組の練習生たちの練習メニューを簡易化したレスリングベースの内容でした。
とは言っても中々ハードな練習内容でした。
マット運動1つ取っても、前方ローリングやブリッジターンなんか、今思えば見様見真似で良くこなしてたなぁと思います。
でも組み技系の経験がせいぜい学校柔道とわんぱく相撲くらいしか無かった僕は練習初日に道場すぐ外の駐車場で嘔吐しましたけどね。
小学1年生から結構強豪校だった高校の部活動に至るまで伝統派空手の経験は有りましたが、当時の実績は鳴かず飛ばず。
アマチュアパンクラスでMMAを始めてからもスタンドの打撃はイマイチでした。
活路を見出したのは、何と練習初日で嘔吐した組み技でした。
でもサブミッションが上手かったワケでは無く、ひたすらリングのコーナーに押し付けてテイクダウン&トップキープで塩漬け。身体が丈夫で腕の太さが丸太のように太かった僕の亡くなった親父のフィジカル遺伝も有ったのかも知れません。基本、このスタイルで数々のアマチュア大会で優勝&入賞を果たし、プロMMAデビューを果たしました。
僕の持論ですけど、MMAのベースはやっぱり組み技だと思ってます。勿論打撃系を否定しているワケでは無く、打撃で勝負したい選手も体幹を崩されないスタンドレスリングとタックルを徹底的に切る技術、柔術のトップベース蹲踞でボトムからの相手の仕掛けを切りまくる技術は最低限必要だと思うのです。
話は飛躍しまくりますが、ブラジリアン柔術だって引き込み&ボトムからの仕掛けがオーセンティックな王道の柔術スタイルだけでは無いと思ってます。
ルール内で有れば展開は至って自由だし、僕はメンバーの皆さんがレスリング技術を有効に活かせばもっと勝率は上がるし、試合の流れのアドバンテージを取っていけると思います。
例えばレスリングテクニックの一つのがぶり。
がぶり、四つ組み、タックルは僕の中でのグラップリング・柔術の核を占める三大テクニックなのですが、中でもがぶりに関しては柔術への応用、汎用性が高いテクニックだと思っています。
今年出場した大阪で行われた全日本ノーギ柔術オープントーナメントに話は遡ります。初戦は相手選手の負傷欠場により不戦勝。迎えたトーナメント次戦は何とあの森戸新士選手と対戦することになったのです。日本を代表するトップグラップラーと序盤はスタンドレスリングの攻防、何とか一進一退の展開で耐え凌ぎます。
ここで僕のグラップリングスキルを支えてきたがぶりがガッチリ嵌りました。中腰状態で耐える森戸選手に対してアンクルピックを仕掛けてテイクダウン2ポイント奪取!……は場外パロウでならずもアドバンテージ1ポイントを先行する事に成功しました。試合はその後、森戸選手の電光石火の引き込みからの三角締めの前に一本負けに斬って落とされましたが、現役トップ選手に立ち技レスリングで渡り合えた事は今年45歳のオジさんにはとても自信になった出来事でした
歴史の長さを話してしまうと野暮になってしまいますが、レスリングは古代オリンピックの頃から存在していた種目。ブラジリアン柔術をもっと広い視野で自由な枠組みの組み技総合競技として捉えるならば、クロストレーニングとしてもレスリングから学び得る事はまだまだ有るのかも知れません。
昨年の夏前頃に、アマゾン先生主宰で選手練習が開催されて僕は初めて知遇を得ることとなりました。元々、立ち技レスリングもとてつもない強さを発揮されていたアマゾン先生が、とある頃を境にその強さに磨きがかかり、これはどういう環境の変化なんだろうと舌を巻いた時期がありました。特にそのがぶりの強烈な事。首に巻かれた腕がアナコンダの様に吸い付き、一度がぶりで組み伏せられると下から体勢を起こす事もほぼ不可能でした。伝え聞くとどうやらわざわざ大阪まで出向いてレスリングの先生に教えを乞うているとの事で僕も納得した次第でした。
アマゾン先生の強さの変化を目の当たりにして、大いにレスリングマスターの先生の指導に興味が湧きたちました。そして何とその先生が大阪からカルペディエム名古屋に出向いてセミナー開催という事でアマゾン先生に頼み込んで参加者に捻じ込んで頂きました。それが初めてカルペディエム名古屋で開催された有元伸悟先生のセミナーだったのです。
元々MMAベースでレスリングスタイルの僕も純粋なレスリングの技術に驚かされる事が多く、有元先生の解かり易い実演技術解説に膝を打つこと多々でした。
そして来たる11月5日に再び有元伸悟先生がカルペディエム名古屋においてレスリングセミナーを開催されます。
ハーフガードの展開はそれはもはやレスリングだ
富山県でお世話になったクラブバーバリアンの福本代表の言葉でした。
今になってみると当時以上にその言葉の意味が解かる気がします。
ハーフガードは下半身の仕事以上に差し手争いが重要だし、体幹と相手の力の受け止め方、自身の頭の付け方はレスリングそのものです。
初心者の方によく説明するボトムポジションで背中をべったり床に付けない事もそうでしょう。
身体を斜に切って、体幹による足の裏の代替を尻や大腿裏に作る事、『寝ているけど起きている』状態を作る意識もレスリング技術に通じてると思います。
寝技も立ち技も柔術。
であるならば立ち技も寝技もレスリングではないでしょうか。
メンバーの皆さんも是非、時には普段と違う技術体系に触れて、『ハイブリッド柔術』を追及してみませんか。